身延山ローカルガストロノミーツアー①

和ヴィーガン創始者本道佳子と作る巨摩の恵みの野菜曼荼羅

2022年8月25日、26日の1泊2日ツアー

【身延山ローカルガストロノミーツアー①】和ヴィーガン創始者本道佳子と作る巨摩の恵みの野菜曼荼羅

日蓮宗総本山である身延山は、鎌倉時代に日蓮聖人が入山されてから約750年の歴史を有する「信仰のお山」として知られていて、聖地である久遠寺は日々参詣者が訪れ、四季折々の美しい姿も人々の心を魅了します。

水がきれいで自然に恵まれたこの地域は、あけぼの大豆や季節の野菜が豊富。また、各宿坊では、仏教文化に基づく「精進料理」という食のスタイルが根付いています。身延山ガストロノミーツアーは、そんな「食文化のお山」の面も知ってもらえるよう、おいしい食体験をメインとして、その背景にある伝統や人々の生活、気候風土などを学べる体験も盛り込んだ、地域をまるごと味わえるぜいたくなプログラムです。

ここでは、初回ツアーの内容を紹介します。身延山ガストロノミーツアーがではどのような体験ができるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください!

第1回身延山ローカルガストロノミーツアーの概要

身延山ローカルガストロノミーツアー初回は、和ヴィーガン料理人・本道佳子氏による「野菜曼荼羅」のワークショップをメインとした1泊2日のツアー。この地域の伝統や文化などに触れるさまざまな体験も盛りだくさんでした。どのような内容だったのか、1日目、2日目のツアーの概要を紹介します。

以下の各体験名をクリックしていただくと、詳しい内容を紹介したページへ移動するので、気になった方はぜひそちらもご覧ください。

ツアー1日目

オリエンテーション@迎賓館えびす屋(久遠寺の門前町内)
昼食@農カフェZencho(迎賓館えびす屋となり)
身延山ガイドツアー@久遠寺周辺
数珠ブレスレットづくり@梅屋瑞光堂(久遠寺の門前町内)
宿(覚林坊)にチェックイン
農作物・種子セミナー@覚林坊
野菜曼荼羅のワークショップ&夕食@覚林坊
お祭り体験@覚林坊

1日目は、久遠寺の門前町にある「農Cafe Zencho」で、地元食材を豊富に使ったランチから始まり、その後、岸之坊お上人の解説による久遠寺周辺の散策、妙石坊での読経体験、パワーストーンの数珠ブレスレット作りを体験。

覚林坊にチェックインののち、メインの食体験へと移ります。2人の生産者による農業の取り組みや食についてのミニ講演と、本道氏による和ヴィーガンのお話のあと、いよいよ夕食タイムとなり「野菜曼荼羅」作りがスタート。

参加者たちは、ずらりと並ぶ色とりどりの料理を思い思いに選び取り、各自白い大きなお皿に盛り付けながら「野菜曼荼羅」を描いていきます。完成したらそれを食べて夕食は終了し、その後、日蓮宗のお祭り体験。ダイナミックな「纏(まとい)」とお囃子の演奏パフォーマンスを鑑賞して、1日目は終わりです。

ツアー2日目

鐘つき見学と朝の勤行体験@久遠寺本堂
朝食@覚林坊
湯葉汲み体験&昼食@ゆばの里(身延町内)
解散

2日目の朝は早く、まだ薄暗いなかで行われる久遠寺境内での鐘つきを見学したのち、豪華絢爛なお堂の中へ移動。何人もの僧侶の方々による読経と太鼓が響く朝の勤行を体験します。終わった後はお堂の天井画として描かれている名物の「墨龍」を見て、どこに移動してもずっと目が合ったままという不思議な龍の絵に驚き、朝勤での余韻を残しながら、覚林坊へと戻り朝食。その後、参加者の方々は身支度をしてチェックアウトをし、「ゆばの里」へと移動。豆乳が煮立てられ甘い湯気が立ち上るなか、湯葉のくみ取りを体験したあとは、昼食となり、湯葉料理を堪能して解散です。

ツアーは途中休憩も取りながら、終始、参加者の方同士のおしゃべりも弾み、和気あいあいとした雰囲気で進行していきました。1人で訪れただけでは知り得ない身延山や久遠寺の深いお話や、宿坊での貴重な経験、この地域ならではの体験など、盛りだくさんな内容で、参加者の方々はどれも興味津々に楽しんでいらっしゃるご様子でした。

食べてととのう和ヴィーガン料理の「野菜曼荼羅」

ツアーの舞台となっている身延山周辺地域の文化や暮らしは、約750年続いてきた身延山の影響を多大に受けています。例えば、メイン会場である覚林坊などの宿坊が点在しているのは、身延山の参詣者を迎えるためであり、日蓮宗という仏教文化のもと宿坊では肉や魚を使わない精進料理が提供されてきました。

今回のメイン体験である「野菜曼荼羅」のワークショップでも、身延山の地域らしさを味わえるものとなっています。精進料理に通じる「和ヴィーガン」の料理と、「曼荼羅」という仏教絵画の精神を掛け合わせた、楽しくておいしい体験です。

「野菜曼荼羅」のワークショップの内容をここから詳しく紹介していきます。

講師:本道佳子氏|和ヴィーガン料理人

本道佳子氏は、「和ヴィーガン料理人」として活躍されている料理家です。ヴィーガンとは、肉や魚を食べず植物性の食材しか食べない人のことで、ベジタリアンとも似ていますが、卵や乳製品など動物性由来の食材も取り入れないという点で、より厳格な菜食主義を選択している人を指します。

本道氏は高校卒業後にフードコーディネーターとして活動を始め、ニューヨークやロサンゼルスで各国の料理を学びながら、ケータリングや、有名高級店のシェフなどを務めて来られました。

2018年には、毎年イタリアミラノで開催されるヴィーガン料理の世界的コンテスト“The Vegetarian Chance International Contest”にて、準優勝を受賞。その後、本道氏は東京に拠点を置き活動されています。

本道佳子氏

フードコーディネーターとして活動を始め、その後単身ニューヨークへ渡り、ケータリングの仕事をしながら各国の料理を学ぶ。『ハドソンリバークラブ』に採用され、NYの『野村エグゼクティブダイニング』へ、スーシェフ(副料理長)で出向。世界各国のエグゼクティブに料理をふるまう。

6年後にロサンゼルスへ移住。ケータリングをしながら、オーガニックやマクロビに触れ、東海岸と西海岸の文化の違いを体験する。10年間のアメリカ生活を終え、日本へ帰国。長野県で、農家の野菜を使った観光施設のメニュー開発に携わるなど、地域活性化の活動を行う。

その後、東京に活動拠点を移しトリニティアイリッシュダンスの日本公演ツアーシェフ、国際プロジェクトの映画「シルク」制作時、「世界仏教徒会議」など、数々のケータリングシェフを担当。熊本や岐阜の病院とコラボレーションして、『最後の晩餐 食事会』を定期的に開催。NPO「国境なき料理団」の団長。

「和ヴィーガン」とは

本道氏がヴィーガンの世界大会に出場するためにイタリアに渡った際、和食の精進料理こそ、世界のトップシェフが目指しているヴィーガン料理の理想なのだということに気づいたのだそう。

「和」には、和食の「和」だけでなく、平和の「和」、調和の「和」といった意味も含みます。世界にはさまざまな主義の人がいますが、どのような人とでも一緒にご飯を食べられるような優しさのあるヴィーガン料理が広がってほしいという想いから、本道氏は「和」とヴィーガンを掛け合わせた「和ヴィーガン」を掲げて活動されているのです。

「野菜曼荼羅」のワークショップとは?

「曼荼羅」とは、宇宙や悟りの境地など、仏教の世界を描いた絵画のことで、「野菜曼荼羅」は、キャンバスに見立てたお皿に野菜で絵を描くように盛り付けをしたものです。ワークショップではまず、本道氏の和ヴィーガン料理がビュッフェ式に並べられ、参加者の方々が各自好きなものを選び取ります。そして席について、真っ白な丸皿に思い思いに料理を盛り付けたら、自分だけの「野菜曼荼羅」のできあがり。

仏様や幾何学模様などが描かれることが多い曼荼羅ですが、ここではそれにとらわれる必要はありません。心の赴くままに作れば、自身を素直に映した小宇宙がお皿の上にできあがるのです。それぞれ丹精を込めて作ったものは十人十色で、お互いに鑑賞するのも楽しい時間でした。

「砂曼荼羅」と呼ばれる仏教のやり方では、祈りをこめながら砂で絵を描き、完成すると崩して、川に流します。この過程は諸行無常の教えを表すといわれ、砂は川から海に流れ世界に祈りを広げていくのです。

「野菜曼荼羅」では、完成後に食べることで、水分とともにお腹を通ってやがて排出されます。料理が、満願成就の祈りとともに体の内から外に流れていくことで心身がととのい、完結するというのがこのワークショップなのです。

身延町特産のあけぼの大豆や旬の野菜をたっぷり使った料理の品々は彩り豊かで美しく、味にもみなさん感動して、本道氏の野菜料理にすっかり魅了されていました。宿坊での清廉な空気のなか、食を通じた楽しい「ととのい」体験は、きっと参加者の方々の心に残るものとなったでしょう。

「食文化のお山」としての身延山へ

身延山ローカルガストロノミーツアー初回の内容を紹介してきました。今後も、地域の豊かな食体験とともに、文化や伝統、気候風土など、まるごと身延を味わえるローカルガストロノミーツアーを開催していきます。さまざまな角度から身延山周辺を楽しめるツアーに、今後ともご期待ください。