身延山ローカルガストロノミーツアー⑤
Japan Night – 能、藍染め、雅楽、仏教美術、懐石のコラボレーション
2022年11月18日、19日の1泊2日ツアー
【身延山ローカルガストロノミーツアー⑤】Japan Night – 能、藍染め、雅楽、仏教美術、懐石のコラボレーション
日蓮宗総本山の身延山は、鎌倉時代に日蓮聖人が入山されてから約750年の歴史を有する「信仰のお山」。ここは日本の歴史や伝統、また仏教から派生して生まれた芸術や文化、日本人の精神性などが継承されてきた土地でもあります。世界に向けて日本の伝統文化を発信する絶好の地ともいえるでしょう。
今回は「Japan Night(ジャパン・ナイト)」と副題がついていて、日本の食体験を楽しんでもらうと同時に、藍染や能など伝統的な芸術や文化も堪能していただけるツアーでした。
ここではこのツアーの内容を紹介します。どのような体験だったのか気になる方は、ぜひ読んでみてください!
第5回身延山ローカルガストロノミーツアーの概要
今回は日本の伝統文化にふれていただく体験をたくさん盛り込んだ内容でした。ここでツアーの概要を紹介していきます。
以下の各体験名をクリックしていただくと、詳しい内容を紹介したページへ移動するので、気になった方はぜひそちらもご覧ください。
ツアー1日目
- オリエンテーション&昼食「おてらんち」@覚林坊
- 藍染インスタレーション @覚林坊
- 能ワークショップ@覚林坊
- 宿にチェックイン@覚林坊/岸之坊/窪之坊
- お祭り体験@迎賓館えびす屋
- 山中湖 笑月による会席料理@迎賓館えびす屋
- 雅楽の演奏@迎賓館えびす屋
- 包丁技披露@迎賓館えびす屋
- 茶道体験@迎賓館えびす屋
1日目は、藍染の作品が展示された覚林坊の会場でスタートしました。昼食は覚林坊オリジナル精進料理の「おてらんち」で、その後オリエンテーションののち、藍染のダンスパフォーマンスへ。続いて能のワークショップに移り、装束の着付け披露や「羽衣」の演舞などが行われました。
その後、参加者の方々はそれぞれの宿にチェックインしてから、迎賓館えびす屋へ移動。夕食は、この日特別に来ていただいた日本料理店「山中湖 笑月」による会席料理。夜は料理の他にも、日蓮宗のお祭り体験や雅楽の生演奏、日本料理の包丁技の実演と日本の伝統文化にふれていただき、最後は茶道体験で1日目は終了しました。
ツアー2日目
- 鐘つき見学と朝の勤行体験@久遠寺本堂
- 朝食@覚林坊
- チェックアウト
2日目は、早朝の5時前に久遠寺境内での鐘つきを見学したのち、豪華絢爛なお堂へ移動し、僧侶の方々による読経と太鼓が響く朝の勤行を体験。終わったら、各宿で朝食の後、参加者の方々はチェックアウトをして解散となりました。
藍染のダンスパフォーマンスや能のワークショップ、趣向が凝らされた会席料理など、ぜいたくな和の催しが盛りだくさんだった今回のツアー。外国人の方も多く、和の深い伝統や文化にふれて楽しまれていたご様子でした。
食べてととのう和ヴィーガン料理の「野菜曼荼羅」
古来から続く藍を使った染色法の藍染は、日本の伝統工芸の一つ。その藍の色は、「ジャパン・ブルー」として世界中にも知られています。
ここでは、今回覚林坊で展示された佐藤氏の藍染のインスタレーションを詳しく紹介していきます。
佐藤文子氏|藍染作家
佐藤文子氏は、江戸時代から約300年続く染色技術を継承し、天然の素材のみを使って作品を制作されている藍染作家です。
湧水や木灰がとれる山梨県都留市の山奥に工房を構え、自然の力で藍染液を発酵させ染め上げています。
現在、作品を並べて全長100mのインスタレーションができるように、2023年内の完成に向けて製作中です。
佐藤文子氏
1990年 単身で藍作農家に住み込み藍の世界へ 。
1993年 藍染作家鈴木道夫氏に師事。藍の天然木灰汁自然発酵建てを学ぶ。板締め絞りの技法で独自の世界観を創る。
1994年 湧水を利用し木灰のとれる環境を求め、山梨県都留市の山奥に工房設立 1995~ 首都圏のギャラリーやデパートで作品発表 。
2010年 ART BOX international inc. 出版の染藍ファイバーアートVOL10 91人が表現する美の世界に掲載される。
2011年〜米国カリフォルニア州のSilk Studyが隔年で藍染工房を訪れ見学会開催。その他、日本を訪れる海外のファンの要望に応えて随時エキシビションを開催。
ダンスで表現される藍染のインスタレーション
インスタレーションとは空間全体を使って表現するやり方のことです。会場となった覚林坊は佐藤氏の作品がずらりと展示され、藍染の世界を立体的に体感できる空間となり参加者の方々をお迎え。
さらにインスタレーションでは飾られた展示を見せるだけでなく、藍染の衣装をまとったダンサー・竹内真紀氏の舞で、動く作品としての表現も披露されました。
よく見る藍染の作品では、藍色の割合が多く染められていない部分が少ないイメージですが、佐藤氏の作品は白の割合が多く、藍色がより際立っているのが印象的。独特の模様やその曲線の美しさにも目を奪われるようでした。宿坊の仏教的な雰囲気に藍染のインスタレーションはよく映えていました。
Japan Night②能にふれあうワークショップ
能は日本の代表的な古典芸能の一つ。能というものを知ってはいても、ほとんどなじみがない方も少なくないでしょう。このワークショップでは同時通訳で英語でも解説されながら、能装束の着付けや演目の一部を披露されるなど、間近で能にふれあう体験ができました。ここではその様子を紹介します。
小川博久氏|重要無形文化財能楽師
小川博久氏は、重要無形文化財総合指定保持者の能楽師です。観世流という能楽の流派に所属されているシテ方をされています。
能ワークショップと「羽衣」演舞
能はユネスコ無形文化遺産に登録されている歌舞劇で、日本の代表的な伝統芸能。約600年前の室町時代に世阿弥によって完成された舞台芸術で、日本人の美意識や精神性を現代にも伝え続けています。
会場では舞台で使う面や小道具も展示され、特に面は珍しそうに手にとって実際に顔にあてたり、写真を撮ったりする参加者の方も多く見られました。
ワークショップでは、小川氏が能の歴史や舞台構成など概要の説明をしたのち「羽衣」という演目に登場する天女の装束の着付けの様子と演目のワンシーンが披露されました。
演じられたのは終わりの場面。大切な羽衣を漁師に持っていかれそうになった天女が、最後は返してもらいお礼に舞を踊るというシーンです。至近距離での能の演技は迫力がありました。
Japan Night③日本の文化を堪能する夕べ
夕食は久遠寺の門前町にある迎賓館えびす屋にて、特別に来ていただいた日本料理店「山中湖 笑月」による会席料理でした。日本の本伝統にふれるさまざまな体験もあり、Japan Nightにふさわしい夕べとなりました。その様子を紹介します。
山中湖 笑月|日本料理店
富士山の麓にお店を構える「山中湖 笑月」は日本料理のお店で、茶の湯で出される懐石料理と、お酒の宴席で出される会席料理を提供しています。
数奇屋作りの茶室や禅の精神を体験できる文化的サロンも併設し、お茶会や日本のマナー講座も体験可能です。
お店は日本庭園や和の建築を備えていて、そこに飾られている書や花、料理の器なども通して和食とともに日本の伝統的な文化や芸術を発信し、一期一会のおもてなしをされています。
会席料理と和づくしのおもてなし
夕食の会場は一棟貸し宿の迎賓館えびす屋。建物はかつて地元の名主が所有していた築約90年の邸宅で、大正モダンな洋室や文化財の欄間(らんま)などがある和の趣向が凝らされた場所です。
食事は特別に来ていただいた「山中湖 笑月」による、旬の食材と身延町周辺の素材を使った会席料理。着物を来たスタッフによる配膳や、一品一品の上品な器、料理に添えられている大根灯籠や紅葉といったしつらえなど日本の風流なおもてなしも随所にちりばめられ、おいしい料理とお酒で場はとても和やかな雰囲気となりました。
夕食の際には、身延山大学の雅楽部隊による生演奏も。仏教音楽としての雅楽の歴史や和楽器などの説明とともに、日本の古来から続く伝統的な響きが奏でられました。
夕食のあとは、「山中湖 笑月」による日本料理の包丁技披露。先ほどの料理に添えられていた大根のかつらむきを使った灯籠や、細やかな野菜の飾り切りなどが目の前で作られていく様に、参加者の方々からは驚きの声が上がりました。
日蓮聖人の命日に行われる御会式万燈行列という日蓮宗の伝統的なお祭り体験の披露もありました。お囃子に合わせて、纏(まとい)と呼ばれる神聖な道具を使っての舞が披露され、観覧している方々にはうちわ太鼓で参加していただきにぎやかな時間でした。
最後は、「山中湖 笑月」によるお茶のおもてなし。一人一人お抹茶の入った茶碗が渡され、茶道を体験していただきました。
伝統的な日本の文化をたっぷりと堪能していただいたJapan Night。海外の方にも日本をよく知ってもらう機会となったのではないでしょうか。
身延山から発信する日本の伝統文化
今回のJapan Nightのツアーの様子を紹介してきました。日蓮宗総本山の身延山は、日本人の精神性や歴史、文化などが継承されてきた場所。これからも、ここから世界に向けて日本文化の発信をしていきます。身延山周辺のストーリーとともに日本の伝統も楽しめるツアーに今後ともご期待ください!